6曲入りミニアルバム
異なる音楽が導く"時間旅行"
第二展示場2階サ-33a
動き出したタイムマシン。
彼女が辿り着いたのは、少しだけ前の世界。
荷物で満載の車に、一人乗り込む青年。
眠気覚ましのコーヒーが香り、
少し長めのセルの音が響く。
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懐かしい街に手を振って
夜の高速道路走り出した
トランクに過去を詰め込んで
僕は今日から長い旅に出るのさ
忘れ物ないか心配か
携帯持ったしガソリンもある
だけど何か忘れているような
それはきっと君の泣き声
いつかの君が言っていた言葉
財布にコーヒーそれだけあれば
きっと大丈夫どこまでも
ヘッドライトは夜道を照らす
トラックを追い越して
次の町へ 次の町へ
知ってる出口行き過ぎる度
寂しさが募ってゆく
アクセルを踏み込んで
もっと先へ もっと先へ
連れていってよ 新しい街まで
コーヒーとおんぼろ
太陽が昇る地平線
眠い目こすって相棒を見る
虫の痕付いた間抜け面
休もうか おんぼろ
マシンは非常に現在と近い時空に到着したようだ。
暑い夏。よくあるラブストーリーが展開している。
───それは少女の記憶と少し重なるようだった。
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さざ波の音と 風に吹かれた君の前髪
月明かり 照らされた僕らは身を委ねる
うなるエンジン 少しだけ跳ねた君の襟足
伸びるライトは 沈黙にそっと寄り添う
生活は変わってく 時計の針は止まらない
季節は変わり 時間は進み 新しい花が咲くだろう
だからさ きっと僕ら雨に濡れても
もうすぐ 幸せがやってくるさ 何も心配するなよ
今夜は君の好きなワインを開けて 愛を探していこう
生活は続いてく 生活は続いてく
沈む体温 まどろみの中に身を寄せる
机の上は 午前三時に時を止めたまま
君は背中を 少し丸めて息をひそめる
うなるエアコン 沈黙をそっと切り裂く
生活は変わっても 僕らはきっと変わらない
涙は消えて 温もり抱いて 新しい愛になるだろう
だからさ きっと僕らは風が吹いたら
二人で 笑いあってるはずさ 何も心配するなよ
今夜は君の好きな曲を流して 深い眠りに着こう
彼女は見知らぬ景色に目を見張る。
市場には美しい工芸品に、異国の香辛料。
その日は十年に一度の建国祭。
歓喜の中、ふと遠くの空を見上げると、不気味な炎の龍の影が待っていた。
消えた都、エルドラド。
今日がその日であることを、まだ誰も知らない。
彼女はデジタルの世界に迷い込む。
退屈で、無意味に思える羅列の中に、
一つ確かな意思があることに気が付いた。
それは数字で表せないはずの、
祈りの符号となる。
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消えゆくあなたを見た
溶け行く街を見た
寸劇の幕引きは
二度とない煌めきで
残されてしまったの
すりガラスの向こう
信号機の意味を
忘れてしまったの
どこを探しても見つからない
あなたが最後にくれた音
私は初めてつくるから
この思い詩にして
あの歌詞も曲も紡ぐ心の声も
遠く時は流れて
全てあなたのために紡ぐファーストノーツ
残されたものを見た
壊れゆく日々を見た
文明の結末は
不完全な幕切れで
壊れれば良かったの
始まる前のように
この声の根拠を
失ってしまったの
どれだけ遠くても消せやしない
あなたが最初にくれた詩は
私は初めて記すから
この思い詩にして
この歌詞も曲も紡ぐ心の声も
遠く宙に流れて
全てあなたのために遺すファーストノーツ
消えゆく記憶を見た
暖かい夢を見た
忘却の隙間には
あなたとのファーストノーツ
マシンはある未来に到着した。彼女は目撃者となる。
飢饉と医療逼迫を名目に、世界政府は「希望者から段階的にアンドロイド化」を推進した。意識移送は実用段階に入り、病にも強い新しい身体は人類の悲願と謳われる。政府は補助金で移行を後押ししたが、結果として補助金に頼る貧民は機械化され、富裕層は高価な食糧と医療で「生身」を維持する。希少化した生身は"貴族"の記号となり、草の根では同化を信奉する団体が勢力を拡大。政府は表向き非難しつつも急進を黙認した。都市では「生身狩り」が日常化。団体は捕らえた者の意識を書き換えて強制的にアンドロイド化し、勢力を"人工的に"拡大していく。
ある夜、とある学生が生身狩りに遭い、強制移送でアンドロイド化される。だが「同期ユレ」の発生により上書きを免れ、完全な記憶と自己同一性を保ったまま目覚めた。彼女は復讐を誓う――世界政府の黙認の構図、アンドロイドOS企業の野望、そして団体の中枢を暴くために。
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瞼も冷え切った 三日月
人目を引いた 百日紅
そのまま逃げ切って
そのまま逃げ切って
人ならお腹が空くのかな
人ならお腹痛いかな
人なら寝れない夜かもな
人なら寝れず夜明けかな
私まだロボットかな
なんのため生まれたの
私まだ少女かな
深呼吸できたらな
夢の中で見た君は ひどい青で ひどい顔で それはまるで それはまるで
夢の中で見た日々は ひどい青で ひどい顔で それはまるで それはまるで
そのまま逃げ切って
そのまま逃げ切って
そのまま逃げ切って
街から飛び出た 真夜中
人気もなくて 薄暗い
そのまま行くなら
そのまま行くなら
私まだロボットかな
なんのため生まれたの
私まだ少女かな
深呼吸できたらな
最低だってずっと無いでしょう
僕はぶちまけるただの人
あなたが憎くてしょうがない
夢から目覚めたただの人
アイドンノーってずっとそうでしょう
微かに薄れるただの記憶
あなたが憎くてしょうがない
機械の身体とこの声で
人なら苦しい 苦しいな
人なら吐きそう 吐きそうだ
人なら泣けない夜かもな
人なら泣けない朝かも
私まだロボットかな
なんのため生まれたの
私まだ少女かな
深呼吸できたらな
夢の中で見た君は
夢の中で見た日々は
彼女は朝露で洗われた草原に降り立つ。
遠くの丘には、小さな人影があった。
大きく深呼吸をして歩き出したその背中は、
勇気に満ちていた。
その姿は微笑ましくも、誇らしい。
冷えた空気が彼女の背中も押す。
旅は始まったばかりだ。
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白い朝靄その向こうから
風の音が遠く響いて
冷えた手のひら擦って
大丈夫
靴紐結んで 立ち上がる
いけるさ
これから歩いてく 誰にも頼らずに
一人で踏みしめる道は
これよりも険しく 何よりも美しくて
今の僕にはそれだけで
鞄の中はまだからっぽで
夢だけ詰めた宝石箱
ふと目をやった腕時計は
たった一つの相棒のようにみえた
逸る足音と胸の鼓動は
始まったばかりの旅を祝う ファンファーレ
そうだろ
どこまで歩けるか 何かを見つけるか
そんなのわからないけれど
僕なら僕らしく見つけたものを大事に
どこへだっていけるはずだろ
何もかも失ったあの夜はまだ近く
僕に迫る
何もかも頼らないそう決めた朝日が空に昇る
始まりの街はもう見えないだろう
振り返らずに進むさ
大丈夫 このまま
確かに進んでる 行く先はわからないけど
今の僕にはそれだけで
ここから始めよう
何もかも一から 一歩ずつ
ここまでがプロローグ